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ニュースレター 第10号

私の感じたここちよい景観(津田伸子)
1995年度はこんなことをします(東孝次)
景観みてある記…新美南吉記念館(水沼信)
レポート:まちのそおい講座 PART5(河村雅伸)
風を感じて自転車で(瀬口哲義)

私の感じたここちよい景観    津田伸子
 写真の橋は私が生まれた育った家のすぐ近くにある「鰐石わにいし橋」である。下を流れるのは椹野川、向かって左に「重ね岩」と呼ばれる大きな岩が見えている。この辺りは私の幼い頃の遊び場だった。橋の欄干の間から足を投げ出し、夕日を見ながら大きな声で唄を歌った。重ね岩の突端に腰掛けて魚釣りをした。そんな思い出が次々と浮かんでくる。ある時、「橋の欄干の4本の柱の上に、戦前までは青銅製の街灯があった」と、祖母から聞かされた。その光景を想像しながら改めて眺めると、見慣れたこの橋はとても洒落たデザインだった。
 遠い昔、ここは海から椹野川をさかのぼって山口の町へと積荷や旅客を運ぶ船たちの終点として栄えた。多くの商人たちで賑わった様子が、「重ね岩」に商いの神様「恵比寿様」が祀られていることからも窺える。また右側の象頭山ぞうずさんの麓には、積荷の無事を祈って安芸の宮島から海運の神様「厳島神社」が分祀された。橋の袂から土手沿いに続く参道は見事に苔むして美しかったという。戦後の混乱期、その参道にはバラックが立ち並び、神社は次第に荒れていった。今ではお社もなくなり、参道の鳥居と「宮島町」という地名だけが残っている。
 かつての美しさはもう断片でしか辿れないけれど、祖母の昔話を思い出しながらここに立つと、神を敬い、川を愛し、水を尊んでいた素朴な人々の情緒豊かな生活が彷彿と浮かんできて、ほのぼのと暖かい心持ちになる。
1995年度はこんなことをします    東孝次 
 4年目となる1995年度は、次のようなことを実施します。引き続き、皆様のより一層のご支援、ご協力を賜わりますよう、よろしくお願いします。

“95手作り景観賞”の募集・審査・表彰
 私たちのグループの主要な行事である“手作り景観賞”の募集・審査・表彰は、1995年度も実施します。“95手作り景観賞”の応募部門は、「たてもの」「ろじ・みち」の2部門です。1980年以降に整備されたものを対象とします。応募方法は1993年度と同様、写真3枚と簡単な推薦理由を提出していただくことにしています。ただし今回は、周辺の状況が分かる写真を必ず提出していただくことにしています。多くの方々からの応募を心からお待ちしています。審査方法も1993年度とほぼ同様な方法で行います。ただ審査会場については、1994年度の6会場に柳井市、長門市を加えた8会場で行います。各会場では山口県建築士会青年部のご協力をお願いしています。審査員については、前年度と同様“まちのよそおい”に関心のある一般の方々にお願いすることにしています。「君たちの活動は段取り屋にしか過ぎないのではないか。グループとしての主体性はどこにあるのか。」といったご批判に応えるために、今年度は「世話人賞」を設けることにしました。この賞は、世話人が手分けして現地調査を行った上で、グループとして心地よい景観と考えられるのではないかといった施設若干点に授与するものです。発表会・表彰式では交流パーティも予定しており、設計者と生活者が交流できる場を提供することにしています。

“私が感じたここちよい景観”の募集
 私たちのPR不足もあって、1994年度は24点の応募しかありませんでした。しかし、景観を幅広く考えるためにも、今年度も募集します。あなたの心地よいと思っている景観を1枚の写真にしてお寄せください。日常生活の中で気持ちいいなと感じておられる眺めをぜひご紹介してほしいのです。
 一定量集まりますと冊子の発行も検討しています。これからのまちづくりの参考にしていただくために市町村に配付するだけでなく、郷土学習の参考資料として中・高校にも配付したいと計画しています。

「95デザインフォーラム」の共催
 昨年度の好評にお応えして、1995年度もデザインプラザHOFUで行われる「95デザインフォーラム」に共催という形で企画協力することにしました。これは、デザインプラザHOFUが中小企業の人材養成の一環として実施されるもので、まちのデザインについて具体的なテーマで研修しようというものです。今年度は、JR防府北駅空地の活用について、「くつろぎの場」、「都会的雰囲気が味わえる場」、「出会い・情報の場」、「まちづくり活動の場」の4つのテーマで、ワークショップ方式を導入し、グループで楽しみながら研修するものです。今回もワークショップの権威である九州芸術工科大学の藤原惠洋先生を講師としてお迎えすることができました。有意義な研修になるものと大いに期待しています。

引き続き、ニュースレターの発行や活動報告書の作成も
 会員の皆様への情報紙であるニュースレターについては、年3回程度、発行する予定です。専任の事務局を置いていない「まちのよそおい・ネットワーク」としては、年3回の発行でも苦戦しています。しかし、定期的な情報発信が必要だと考え、今年度も頑張ることにしていますので、よろしくお願いします。
 私たちの活動は大変息の長いものになると思っています。そのため、毎年度その活動をまとめておくことは、今後の活動を考える上で大変重要だと思っています。その意味からも、毎年度きちんと活動報告書は作成したいと考えています。

 
景観みてある記…新美南吉記念館(愛知県半田市)  水沼信
公開設計競技で設計者が決定し、昨年6月に開館した地元出身の童話作家・新美南吉(代表作:ごんぎつね)の作品などを展示するための施設だ。
 敷地の周囲の田園風景の中で建築の存在を消し去り、自然の一部となることを意識した案が第一席となり実現したのである。芝に被われた大きなうねりを持った建物が幾重にも重なり、地面に溶け込んでいる様子はまさに大地と建築が一体化していると言える。
 しかし最寄りの駅から乗ったタクシーの運転手さんの話では、この記念館を地元の人は決して良くは思っていないようだ。「こどもが屋根に登って危険だ。」「13億円もかけてもったいない。」といった声が多いそうだ。施設計画に市民が参加できるような仕組みはなかったものか…。悔やまれるところだ。
 さらに言えば外観同様に内部の展示空間もモルタルで仕上げられ、大きなうねりをもったスロープになっている。これはなんとも気持ちの悪い空間だ。落ち着いて展示物を見ようという気持ちには決してなれない。
レポート:まちのそおい講座 PART5    河村雅伸
 去る5月21日、宇部市厚南の廣澤邸において「まちのそおい講座 PART5」が行われました。朝から降りしきる雨の中、分かりにくい会場だったにもかかわらず、100名近くの方々が集まって来られ、会場は熱気にあふれていました。
今回のテーマは、民家の保存再生からまちのよそおいを考える−廣澤邸の修復によせて−で、明治時代の武家様式の民家を修復された廣澤邸を訪ね、住む人、造る人、研究する人、それぞれの立場から保存の意義や手法について話してもらい、建物の歴史的変遷、生活形態に合った「まちのよそおい」を考えることを目的に開催しました。
住む人の立場から廣澤夫妻がサム・マウロ氏との出会いや「おばけ屋敷」と呼ばれるまで傷んでいたこの家を修復するに至るまでの経緯を話され、研究する人の立場から福田代表世話人が山口県内の伝統的建造物群の保存の現状について話しました。続いて、造る人の立場から建築家の平氏が、この建物を残す意味として家族の絆や思い出そして近所とのつながりという人間関係の重要性と文化の継承を話され、修復工事を担当された原田・森本両氏が苦労話や職人のすばらしさを話され、最後に木の造形家の坂田氏が木に対する思いを話されました。
廣澤邸は、平氏が言われた歴史資料的に単に保存するのではなく生活をしながら保存させたいという思いが、古い建物を修復した客間部分と現在の生活に合わせて改修した現代的な居間部分の融合にうまく表現されていました。
今回の講座は、今までのように学生や若い人ばかりの集まりと違い年配の方が多かったのが特徴で、これは廣澤氏ご自身の知名度なのか新聞というマスメディアの力なのか分かりませんが、「まちのよそおい・ネットワーク」をより多くの人々に知ってもらう上で大成功であったと思います。
これからも、このような公開講座を開催できれば(今までもそうでしたが)一般の方々に「景観」について理解していただけるのではないかと思います。ただ最後に、古い建物の保存運動を行っている団体と勘違いして感謝されるという一幕があり、思わず失笑してしまいましたが‥‥何はともあれ担当の瀬口さんお疲れ様でした。
風を感じて自転車で    瀬口哲義
休日に自転車で遠出をします。小野田から秋吉までが30kmで約1時間半ほどかかります。久しぶりに県道を走ると、自転車道までの道が拡張され、茶畑や檜の林が削られ、無惨な山肌。30年もすれば元の緑に戻るとは思いますが、少し残念な気がします。木陰の中を走るとアスファルトの道も少しは気持ちのいいものです。自転車の視点、歩く視点、自転車での視点とその速度によって、景色は変わってきます。もっとゆっくり、風を感じながら生きていきたいものです。