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ニュースレター 第9号

私の感じたここちよい景観(二井裕子)
デザインフォーラム・リポート2(東孝次)
94手作り景観賞の審査結果について
水沼レポート…おかげ横町(水沼信)
     天神通り(鈴木宏明)
「私の感じたここちよい景観」募集継続!
編集後記

私の感じたここちよい景観   二井裕子
校庭を見つめて立ち並ぷ大きなイプキの木を見ると、特別な思いがする。
伝統の匂い、歴史の音、いつか感じた懐かしい風が私を包込む。
その一瞬、私は、十数年の時をさかのぼって、赤いランドセル、おかっぱ頭の少女に戻る。
「イプキ」でなくてはダメなのだ。「思い出の校舎」「思い出の教室」ではダメなのである。

あなたは、イブキの木をご存じですか。
長い時を刻々と刻んで大きく成長したイブキの木。大きいが控えめでやぽったい。
時を経て今、まさかこの木が、過去と現在を結ぷ架け橋になろうとは想像もしなかった。
幼時の歴史を包み込み、ふと過去を呼ぴ戻してくれる、いわぱ私にとっての「歴史の扉」なのである。

ところで、設計者は、私がこういう思いを抱くことを計算していたのでしょうか。
こんな計算外の景観、意味のない空問の効果というのも面白いと思います。
こういった視点から考えて、現代の「すべて計算されつくされたモノづくり」に対して「‘無作為の作為’的、‘未完の完成’的モノづくり」に着眼してはいかがでしょう。

デザインフォーラム・リポート2    東孝次
今回は、第3回の現地視察から第6回の研究結果発表会までの4回のデザインフォーラムについてレポートします。
第3回は、兵庫県の神戸市、篠山町、出石町へ視察旅行に出掛けました。海から神戸市をながめようということで、関九フェリーで行くことになりました。船旅というロマンティックな試みでしたが、大部屋での宿泊となったため、ほとんど眠らない一夜を過ごすことになりました。神戸では六甲アイランド、ハーバーランドを見学し、丹波篠山の町並みを足早に歩き、また出石町でも静思堂、文化会館、弘道小学校、出石町の町並みに視察に、昼食時は「出石町城下町を活かす会」の会長さんのお話と盛りだくさんの内容となっていました。ハード・スケジュールとなっていたため不消化のまま防府に帰ってしまったような気がします。企画者として大いに反省しています。でもすっかり仲良しになれたことは良かったのではないかと思っています。
第4回目は残暑厳しい9月3日開かれました。第2回の現地踏査で発見したデザイン資源のマップ化を行いました。これからも伸ばしたいものは青丸、気を付けておくべきことは黄丸、改善すべきものは赤丸をマップ上にマーキングし、それぞれにコメントを付けていきました。毎回メンバーの変わるグループもありましたが、どのグループのマップも青、黄、赤のポイントが貼られ、書き込みがされていました。対象地区の問題・課題がさまざまな角度から問い直されたようです。
第5回目は、最終回の研究結果発表会までの最後の研修です。前回作成したマップをもとに、どのような課題があり、どんな提案をするかが議論されました。さらに研究成果をどのような方法で表現するかも検討されました。各グループ発表会に向けて、その顔には一層の真剣さが伺われました。しかし、今回の研修では発表会の準備はできませんでした。その後、何度も集まったり、電話やファックスで連絡を取り合うなど、涙ぐましいまでの努力が行われました。
そして、10月16日の発表当日がやってきました。午前中あった「94手作り景観賞/交流会&表彰式」には目もくれず、発表方法の最終打合せに余念がありません。(まちのよそおい・ネットワークとしては、デザインフォーラムに参加された方々にも「94手作り景観賞/交流会&表彰式」に出席してほしかったのですが、残念でした。)
さて、その発表の内容ですが、入念に準備されただけあって、バラエティあふれるすばらしい内容になっていました。第5回の研修の様子では思いもかけない発表内容でした。参加者の熱意がひしひしと伝わってきました。この成果を来年度は具体的なものづくりへと繋がっていくことを祈りつつ、デザインフォーラムレポートを終わらせていただきます。
94手作り景観賞の審査結果について
“ 94手作り景観賞”の審査の概要を報告させていただきます。
9月17日から10月2日にかけて、下関、萩、山口、岩国、徳山、小野田の県内6つの会場で展示会を兼ねた審査会を開催しました。場内に掲示した応募作品パネルを“まちのよそおい”に関心のある一般の方々に見ていただき、「たてもの」部門については3点、「みずべの施設」と「まちなみ」部門については2点ずつ選んでもらいました。併せて、作品に対する感想も記入していただきました。
得票数の上位から、「たてもの」部門については6点、「みずべの施設」と「まちなみ」部門ついては3点ずつを「優秀賞」としました。私たちの活動の趣旨から考えて「最優秀賞」を決定する意味はないのではということで、今年度は「最優秀賞」は決めませんでした。
設計者と一般市民との交流の場として10月16日にデザインプラザHOFUにおいて「94手作り景観賞/交流会&表彰式」を開催しました。全くの手弁当で県外からも設計者等に参加いただき、写真では図り知ることのできない設計上の思い入れや設計者の情熱をお聞きすることができました。会場からの質問にも答えていただくことにしましたので、作る側と使う側との接点になったのではないかと思っています。大変有意義な交流会でしたが、参加者が少なかったのが悔やまれてなりません。
さて、今年度の応募方法ですが、昨年度と全く同じとしました。応募点数は、「たてもの」部門 28点、「みずべの施設」部門13点、「まちなみ」部門14点でした。一般の方々が比較的応募しやすい募集方法だと思うのですが、私たちのPR不足も手伝って、私たちが期待したほどには一般からの応募はありませんでした。
また、審査についてもいくつかの問題がありました。多くの方々に審査していただくため、実物を見ないで写真による審査という方法をとらざるを得ません。このため、写真の質の違い、建物の建つロケーションなど、建物本来の景観上の問題以外の要素が審査に影響することが多かったようです。また施設そのものの審査なのか、周辺の景観を考慮した審査なのか、審査基準があいまいであるといった問題も克服されていません。昨年度と同様、多くの方に審査していただくことの難しさを今更のように感じています。
私たちも手探りの中でよりよい方法を模索しながら応募方法、審査方法を決めています。また私たちの活動は優れたものを選ぶことにあるのではなく、身近な景観に関心を持っていただくことにあります。私たちの活動の趣旨をご理解いただき、不備な点については、今後可能な限り改めていくということでご了解をお願いします。 なお、今年度につきましては、(財)山口県文化振興財団より助成事業としての決定を受けています。また従来からの「優良な建築士グループの活動」(今年度が最終年度となります。)として山口県建築士会からの助成も受けることになっています。

592名の皆さんによる審査の結果、「優秀賞」を受賞され作品の施設名称、施主、設計者、施工者の方々は次のとおりです。


「優秀賞」受賞作品/施設名称・施主・設計者・施工者一覧 

  「たてもの」部門(応募作品数…28点)  

    施設名称:町衆文化生活の館・陶芸の館(久賀町)
    施主:久賀町
    設計者:アトリエSAM建築設計室
    施工者:平川建設(株)
   
    施設名称:CRYSTAL UNIT(大畠町)
    施主:上野雅美
    設計者:窪田勝文/窪田建築アトリエ
    施工者:(株)仲合

    施設名称:小田学園 富田幼稚園(新南陽市)
    施主:学校法人小田学園 富田幼稚園
    設計者:(株)真建築地域研究所
    施工者:三和建設(株)
 
    施設名称:下関市考古博物館(下関市)
    施主:下関市
    設計者:下関市建築課、日建設計
    施工者:三井建設・友田組・池田住宅共同企業体

    施設名称:周東町パストラルホール(周東町)
    施主:周東町
    設計者:竹山聖+アモルフ
    施工者:フジタ・洋林建設共同企業体

    施設名称:喫茶店「Wien」(徳山市)
    施主:中邑勇
    設計者:段インテリア
    施工者:段インテリア

  「みずべの施設」部門(応募作品数…13点)  

    施設名称:清流通り(鹿野町)
    施主:鹿野町
    設計者:デルタエンジニアリング(株)
    施工者:江村建設・増野建設共同企業体他

    施設名称:白坂川親水護岸(萩市)
    施主:山口県
    設計者:(株)クレスコ、中村秀夫
    施工者:松村建設(株)、(株)大本組

    施設名称:石光川親水公園(熊毛町)
    施主:山口県
    設計者:巽設計事務所
    施工者:(株)荒石組、(株)河村植木

  「まちなみ」部門(応募作品数…14点)  

    施設名称:椋野台(下関市)
    施主:山陽チップ工業(株)
    設計者:山陽チップ工業(株)
    施工者:佐伯建設工業(株)、住吉工業(株)

    施設名称:萩市堀内地区のまちなみ(萩市)

    施設名称:徳山港線のまちなみ(徳山市)
水沼レポート…おかげ横町(三重県伊勢市)    水沼信
 全国各地の美しい歴史的町並みをとどめていた都市同様、伊勢神宮内宮の門前町「おはらい町」も近代的な建物への建て替えによってその町並みがくずれつつあった。
 その一角に「おかげ横町」が昨年7月にオープンしたのである。地元の和菓子の老舗が出資した「明治時代の伊勢の町並みを再現したミニテーマパーク」で、6,500平方メートルの敷地に特産物の物販店、飲食店、テーマ館など17棟が新築されている。全ての建物は見た目だけでなく、材料から工法まで伊勢地方の伝統にこだわった本物志向の建築物である。今は完成したぱかりでどこかよそよそしさを感じるが、風雨によって外壁の色があせて若干さびれてくるにつれて味が出てくることだろう。またおかげ横町のおかげで伊勢市の主導で進められている「おはらい町」の歴史的町並みの整備にも拍車がかかり伝統建築への建て替えか増加してきているという。まちづくりのひとつのモデルケースといえる。
 ところでそれに引き替え、おかげ横町で食べた名物・伊勢うどんはひどかったなぁ。ゆであがった麺に醤油がほんの少しかかっていてその上に生卵がおとしてあるだけ…。これで400円とは。もう少しどうにかならないものだろうか。…これは余談。
天神通り  鈴木宏明
 私は焼き物が好きだ。なぜなら良い焼き物は、作者の人柄や思想哲学というものを内在した小宇宙を形成し、自ずとそれを見る人使う人に、これでもかこれでもかと自己主張する。そんな焼き物が私はたまらなく好きだ。
 ところで旅をする時、なんとも心地よい緊張感を感じる街がある。町並みが色鮮やかであるからでも凝っているからでもない。これはなんだろう。〜そんな街のある神社でひと休み。お菓子とお茶を戴き、その茶碗の小宇宙を楽しんでいた時〜ふとそれは住んでいる人々の望む生き方住み方が、はっきりとした意志として町並みのディテールに至るまで浸透し、街全体の主張が緊張感となって私に伝わってくるからだと直感した。
 焼き物も街並みも同じだ。造る人が住む人が、その心をどう具体化するか、又させるかが問題なのだ。
 いつの日か私は心地よい緊張感を感じながら天神通りを歩いてみたい。
「私の感じたここちよい景観」募集継続!
 夏の締め切り分では岩国、山口、小野田、徳地、萩、山陽町、徳山等からの応募かありました。ご自分の近くで、もっとこんないいところがあるよ、という方。どうぞお国自慢をして下さい。
 次回締め切りは来年2月15日です。秋や冬は景観にますます磨きがかかる良い季節です。
 皆さんのご応募を、世話人一同お待ち申し上げております。
 応募要領の必要な方は事務局までご請求下さい。
☆編集後記☆
 今年は猛暑のせいか、紅葉が鮮やかではないと先日のニュースで言っていました。
 山口も例外ではなく、紅の少ない少し寂しい風景です。そういえぱ、数年前に台風被害のあった年、塩害で木々の葉は枯れ、とても淋しい秋の風景でした。
 「手作り景観賞」もお陰様で3回目を無事終了することができました。募集部門・審査方法等いろいろ模索しながらの3年でしたが、ネットワークの広がりと人々の“景観”ヘの意識の広がりが、私たちの財産として年々積み重なっています。みんな“心地よい景観”を求めているんですね。
 景観を考えるとき、そこには人為的な造形物・建物が多く目に入ってきます。
 しかし、今年の紅葉などを見ると、どれほど自然や四季というものが私たちの“心地よさ”に影響を与えているのかがわかります。一本の木が景観に与える影響は大きいものです。来年もまた、“心地よい景観”を求めて活動を続けていきます。一緒に考えていきましょう。[N.I]