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緑の風景(山根由紀)
私たちは、次のような趣旨から、「手作り景観賞(建築部門)」を行うことにしました。
「手作り景観賞」はとてもいいことだと思うけど、まてよ、「景観」って一体なあに?(水沼信)
景観なのに、なぜ建築なの(東孝次)
都市景観と調和した建築の紹介-KBC九州朝日放送本社-(中園眞人)
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緑の風景    山根由紀
 木のトンネルをくぐってたどりついたカヤぶき屋根の家。
 その家も築後181年目にして、まちからやってきた若い嫁さんに、すっかり新しく建て替えられてしまった。
 嫁さんの希望は、モデルハウスのようにシャレた造りのシステム・キッチンと、クローゼットのある寝室だった。
 けれど、昔堅気の大工の棟梁は、ガンとしてそれを受け入れず、二重屋根の平屋を建てた。
 竹やぶの小山を背負ったその家は、実に農家然と構えて、丘の上に建っていた。男の子が生まれ、裏山で虫を追い、木の実を拾った。
 女の子が生まれた年に、道を造るために裏山がなくなった。道との境には目かくしのために高いブロック塀をついた。
 棟梁が「山の緑に映えるように」と配慮した屋根瓦も、少し淋しくなった。
 もう、若くなくなった嫁さんは、女の子を連れて、保育所経由で職場に通っている。
 保育所の前にある手入れの行き届いた庭や生垣の家を見るたび、生活くらす事の楽しみを、少し分けてもらったような気分になる。
 建物は、中に居る人の住みやすさと外から関わる人の生活くらしやすさとを持ち合わせてるんじゃないかナ。
 そう思うと、システム・キッチンもクローゼットも今はなくてもいいや、と変に納得してしまう。
 竹やぶの小山は懐かしいけど、これもまた、道向こうに住まう人の住みやすさだな、と思う事で納得するコトにしよう。
 古い嫁さんになった時、息子の嫁さんも同じ思いをするのだろうか。
 自分が嫁入りの時にくぐった木々のトンネルは、今は、もうない。
  私たちは、次のような趣旨から、「手作り景観賞(建築部門)」を行うことにしました。
量から質の時代が叫ばれて久しくなります。21世紀を間近に控えて、山口県内の建築物の状況はどうでしょうか。
確かに個々のデザインでは優れたものも見られるようになりました。しかし、まちづくりといった面からはまだまだ考えるべきことが多いのではないでしょうか。そのための一つのきっかけづくりとして、景観という視点から建築をとらえ直してみてはどうでしょう。つまり、建築物を単体としてではなく、まちを構成する重要な要素として考えてみるのです。建築物は、人工的な景観の中で大切な部分を占めているからです。
さて、この景観ですが、私たちは例えば地域やまちのみだしなみだと考えています。フォーマルドレスを着ることがけっしてみだしなみではありません。それぞれの場面には、それぞれにふさわしい服装があります。同じように、フォーマルな場所、カジュアルが似合う場所、私たちの周りにはさまざまな場所があり、それぞれにふさわしいよそおいがあります。
みだしなみが整っている場所は、人々にゆとり、やすらぎ、うるおいを感じさせてくれます。このように考えてきますと、優れた景観とはどのようなものだと思えばいいのでしょう。私たちは、みんなが共通に心地よいと感じることができる環境だと考えています。
そこで、建築に携わっている人もそうでない人も、私たちが心地よいと感じる建築物を選んで、表彰しようではないかと考えたのです。つまり、生活感覚で選ぶ「 手作り景観賞(建築部門)」を企画してみたのです。この過程を通して、これからの建築物について議論し、山口県内の建築物のレベルアップを図っていこうとするものなのです。それは同時に、県内の建築に関わる人たちの活躍の場を広げるだけでなく、建築物に対する一般の方々の認識を深めることにもなり、なによりも私たちが生活するまちを見直すことにもなるのではないかと考えています。
また、生活者自らが自分たちのまちを心地よいものにしていくことは、これからの私たちが目指すべき文化的活動の1つではないかとも考えています。私たち一人ひとりが責任と自覚を持ち、きちんと発言していくことが、心地よいまちをつくっていくことになつのではないかと思っています。
この企画の最大の特色は、参加料さえ払えば、誰でも審査員になっていただけるということです。
  多くの方々のご協力、ご支援を心よりお待ちしています。
「手作り景観賞」はとてもいいことだと思うけど、まてよ、「景観」って一性なあに? 水沼信
「景観」とは
「手作り景観賞」の選考に先だって、まず「景観」についてみんなで共通認離を持っておく必要があります。「景観」とよく似た言葉に「風景」「景色」がありますが、これらの言葉の意味はどこがどうちがうのでしょう。一般的に「景観」より「風景」「景色」の方が、馴染深くよく使われているのではないでしょうか。
「景観」、「風景」「景色」どれもよく似た意味で使われますが、今後、私たちはこれらの言葉をはっきり区別して使っていきたいと思います。
「風景」「景色」という言葉は、「美しい」「好ましい」といった見る人にとって好印象なありさまを連想させます。この「美しい」「好ましい」といった人の嗜好に関わる評価は極めて主観的で情緒的なものです。そのため、人によって評価に大きなばらつきがあります。言いかえれば「風景」「景色」とは人の主額的な判断によって評価されるものであると言えます。
それに対して、「景観」は、見る人の主観や情緒に左右されずに客観的、科学的に記載できるものだと考えます。これはコンビュータや精密な測定機器を使わなければ「景観」を評価することができないということでは決してありません。
 むしろ、より多くの人がそれぞれの主観によって判断した印象の総和こそ客観的な「景観」の評価基準になるのです。今回の「手作り景観賞」において、公募によって誰でも審査員になることができることの意味ばここにあると考えます。

「景観」のとらえ方

○対象物と視点場
 「景観」には対象物と視点場(視点の位置)が必要です。いくら優れた対象物でもそれを見ることができる場所に多くの人が簡単に行けなければ、これは「景観」とは言えません。例えば、個人の住宅の縁側から見た富士山は「景観」でほなく「風景」「景色」です。

○主対象と対象場
 対象物には必ず主対象と対象場があります。対象物の印象はその対象物だけでなく周囲の環境も合めた総合的なものによって決定されます。いくら洗練されたデザインの建物でもその周囲の環境と調和していなけれぱ「景観」として優れているとは言えません。

○「景観」と時間
 「景観」は時間・季節によって様々に変化します。朝の景観、昼の景観、夜の景観。季節折々の景観、お祭りのときの景観。「景観」の評価は時間、季節によるうつろいも考えなければいけません。

○「景観」と五感
 人が物事を察知する際、その八割は五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)のうちの視覚によって感じとっていると言われています。それだけ、私たちの生活の中で「ものの色や形」の影響が大きいと言えます。しかし、聴覚、嗅覚なども物事を察知する際には重要な役割を果たしていることは言うまでもありません。このように「景観」は五感の総合判断によって評価されなければいけません。

 以上、「景観」の定義、とらえ方について説明しましたが、これらのことを踏まえて、私たち「まちのよそおい・ネットワーク」では「すぐれた景観」を「みんなが共通に心地よいと感じることができる環境」だと定義しました。

景観なのに、なぜ建築なの    東孝次
 景観には、自然景観あり、人工景観ありと、さまざまです。人工景観のうちでも、道路や橋から広告物、サインに至るまで、多種多様です。その中で、なぜ建築をまず取り上げるのでしょう。街並みなら分かるのだけど、その構成要素である建築を景観とはとらえにくいのだが、といった声を多く聞きました。私たちは、次の2つの理由から、まず建築を「手作り景観賞」の対象にしたいと考えています。
 第一は、優れた建築を連続させることにより、快適な街並みを形づくることができ、さらに心地よい景観を形成することができると考えているからです。つまり、建築は景観を構成する重要な要素だと思っているのです。建築物は、身近で量的にも多く、日常的に目にせざるをえないものです。生活者の視点からまちづくりを考える場合、まず、初めに取り上げるべき部門ではないかと考えています。
 第二は、建築の計画には昔から景観がテーマの1つであったということです。建築の主な課題は、いかに利用しやすい建物を作るかですが、併せて、いかにデザイン的に優れたものもするか、まわりの景観にいかに溶け込ませるかといったこともテーマとなってきました。磨かれた感性と景観に関心を持つ生活者が今後増えるものと予想されます。景観への配慮は、ますます重要な課題となってくるのではないでしょうか。
 このような理由から、まず「建築部門」を取り上げ、他の分野への拡大は今後の検討課題にしたいと思っています。   
                 
都市景観と調和した建築の紹介-KBC九州朝日放送本社-     中園眞人
 建物のまわりの空き地は、街並み景観の形成や都市環境づくりの上で重要なポイントになります。敷地内での空き地の配置やその性格づけと演出を、いろいろな観点から細かく検討することにより、オープンスペースを都市空間における景観形成の主役とすることが可能となります。このオープンスペースには、

 ○建築室内環境の確保-快適な室内環境をつくる光・風などを外部から招き入れる
 ○屋外活動・交通空間-多くの人々が出会い、交流する
 ○修景空間-まちなみの表情を整え、通りの雰囲気を演出する
などの機能があります。ここで紹介する建物は地元放送社の本社ビルで、交差点に位置する敷地に建てられ、街角広場を設けることにより、地域社会とのつながりを空間的に表現しています。建物の角をかきとり、街角を面的に開放することによって、人のたまり場となる小広場を提供しています。敷地境界部分に造形的植栽をほどこし、高木とともに都心の緑のオアシスとなっています。またアプローチにはモニュメントとなる円柱を配置し、夜間照明の機能を併せ持っています。
建物のファサードは、このオープンスペースに面した1階部分をガラスで覆い、一般市民も利用できるレストランやホールなどを配置しています。

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賛同者の声…提案編
 賛同者の方々からさまざまな提案、疑問、激励などが寄せられました。
今回は紙面の都合で提案についてのみ掲載します。審査対象に関する提案が多く、今
後の検討課題にさせていただきたいと思っています。
なお、文章は原文の要旨を変えない範囲で“である調”に変えさせていただいていま
す。今後とも、提案、疑問など、どしどしお寄せください。

(審査対象に関する提案)
・建築物単体だけでなく、「まちなみ」そのものも審査対象に加えたら
・土木分野の方面も包括的に検討されたら
・建築だけでなく、景観を構成する街づくりについても考えたら
・将来的課題として、建築以外のものについても取り組まれたら
・グランドデザイン、サインデザインにも拡大されたら
・景観デザインの対象を建築から街並み等に拡大を望む
・建築部門だけでなく、街路、公園、ウオーターフロントなどにも対象として拡大す
 ることを提案する
(その他)
・「手作り景観賞」はわかりにくい、“みんなで選ぶまちのよそおい”とサブタイト
 ルをつけたら
・審査の評価そのものも公表すると面白いと思う。審査した内容が審査されるから 
・影響力を考えれば、“worst”の部も設けた方がよいと思う
・建築物におけるデザインの概念について研究する場があれば良いと思う
・会費を採用する事は悪い事ではないが、カンパのみで5年位活動してはどうか
・建築の場合、最終審査は、周囲の環境も含め、現地での確認が望ましいのでは
今後のスケジュール
 「まちのよそおい・ネットワーク」では次のスケジュールで進めたいと考えています。
  皆様のご指導、ご協力をお願いします。

8月上旬  審査員・応募作品・協賛企業 募集開始           
9月19日  第1回 まちのよそおい講座 開催
       会場 山口芸術短期大学
       時間 午後2時〜5時
       内容 景観と建築について、少し考えてみませんか
9月下旬  「まちのよそおい」第2号発行
9月末   応募作品 募集締めきり(審査員・協賛企業については当日まで募集しています。)
10月中旬  第2回 まちのよそおい講座 開催
       会場、時間、内容につては、第2号でご案内します。
10月下旬  作品巡回展(県内2〜4ヶ所を予定)
11月8日  審査会&表彰式
11月下旬  「まちのよそおい」第3号発行